「マラソンにホームランはない」。瀬古利彦が神野大地に贈った言葉 (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

「キツかったですね」

 神野は、そう言って苦笑した。

「ループやレイヤーをやることで速くなるのかなって思っていたんですが、今日全部がつながって動かせるようにならないと意味がないと言われました。確かにそうだなって思いましたし、今日のような練習も今後、重要になってくると思います」
 
 中野とは青学時代からの付き合いで卒業後もスポーツモチベーションでトレーニングを継続してきた。ここに至り、改めて正式に中野とタッグを組んだ理由はいったい何だったのだろうか。

「僕の目標は東京五輪のマラソンに出場してメダルを獲ること。ただ、僕は人と同じ練習をやっても上にはいけない。人のやらないことをやらないと、上にはいけないと思って陸上をやってきたんです。今回もそう。中野さんとやるとキツいトレーニングが山ほど待っているんですけど、少しでも『これやって強くなれるのかな?』っていう気持ちがあったらできないと思うんです。中野さんの指導であれば、その迷いがないですし、それをやり切れば五輪に近づける。それに『神野と金メダルを獲りたい』って言ってくださったことも自分の中に響きましたね(笑)」

 中野は五輪でメダルを獲得するアスリートには、いくつかの共通点があるという。そのひとつが、自分がより強くなるためにはどういう環境が必要なのかを考え、行動に移せるということだ。アスリートは同じコーチが長年指導していくケースが多い。それはプラス面もあるが、情が邪魔してそのままズルズルというパターンも多いという。

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