「マラソンにホームランはない」。
瀬古利彦が神野大地に贈った言葉

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 まず、中野に聞きたかったのは、神野をどのように強化し、東京五輪までのプランニングをどう考えているのかということだった。

「今、神野が取り組んでいるのがループ、レイヤートレーニング、そして全体をリンクさせてコントロールするトレーニングです。
 
 まず、ループですが、その前提として肋骨と骨盤をしっかりと支えるためにインナーユニットを強化し、さらにアウターユニットを鍛えて安定させてきました。それができていないとループをやっても無意味になります。『ループ』とはコアトレの一種なんですが、考え方はビルの耐震設計と同じです。ビルの耐震強度を高めるためには斜めに筋交いを入れて補強していきますが、体も同じで斜めに補強を入れていき、骨盤と足をしっかりつなげて安定させていくんです」

 なぜループが必要なのかを問うと、神野の足を強化したいからだという。

「五輪のメダリストになるには、最大酸素摂取量(VO2マックス)が80を超えていないと難しいんですが、神野は82あるんです。すでにメダルを獲れるポルシェ並みの心肺機能があるんですが、足はまだ軽自動車なんですよ」

 一般的に足の筋肉における遅筋繊維と速筋繊維の割合は50%-50%と言われているが、長距離のトップレベルの選手は遅筋繊維60%-速筋繊維40%と差が生じており、神野もそうだという。しかし、現状では筋持久力がまだまだ足りない。神野自身も2月に青梅マラソンを走って、そのことを痛感したという。ただ、速筋繊維はいくらトレーニングをしても遅筋繊維には変わらないので、速筋繊維を少しでも中間筋にしていく作業が必要になる。

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