大迫傑の異例なボストンマラソン参戦は、日本陸上界の常識を崩せるか (3ページ目)

  • 酒井政人●文 text by Sakai Masato
  • photo by AFLO

 しかし、大迫が選んだのは4月17日のボストンだった。どんなに好タイムを出したところで、ロンドン世界選手権にはつながらない。もうひとつ心配なのは、トラック種目への影響だ。大迫はロンドン世界選手権の参加標準記録(5000m/13分22秒60、1万m/27分45秒00、2016年以降の記録が条件)をまだクリアしていない。マラソンのダメージが残っていると、トラックへの移行がうまく進まずに、ロンドン世界選手権の日本代表を逃すリスクが高くなるからだ。

 もしかしたら大迫はロンドン世界選手権をさほど視野に入れていない可能性もある。さらに先を考えた上での「チャレンジ」なのかもしれない。

 先日、別の取材で大迫の恩師であり、オレゴンプロジェクトを視察したこともある住友電工・渡辺康幸監督(前早大駅伝監督)に会う機会があった。大迫のマラソン挑戦について尋ねると、「あのチームは先のことを考えてプログラムを組んでいるので、今後を見据えての挑戦だと思いますよ。タイムですか? 2時間12分でまとめられたらいいんじゃないでしょうか。どの集団でいくのかわかりませんが、サードペースメーカーについていければちょうどいいのかもしれません。ボストンがどんな結果でも、大迫君はオレゴンで強くなってくれると信じていますし、強くなってくれなきゃ日本陸上界のためにならないですよ」と話してくれた。

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