順当という名の低調。川内優輝ほか
男子マラソン代表に未来は見えるか

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 続く2月5日の別府大分は、中間点のトップ通過タイムが1時間04分37秒と福岡より遅い展開 になった。その後、30km地点からの5kmを15分0秒台に上げた中本とデルジェ・デベレ(エチオピア)が、次の5kmも15分10秒台を維持して抜け出す。そして、38km 過ぎでスパートをかけた中本がデベレを振り切って2時間09分32秒でゴール。13年モスクワ世界選手権で5位になって以来苦しんでいた中本だが、14回目のマラソンで勝利への執念を見せ、初優勝を果たして代表選考のテーブルに乗ることになった。

 だがタイムをみれば、この時点で川内と中本が代表入りする確証はなかった。コース変更で終盤のアップダウンがなくなった東京で、好記録が続出する可能性もあったからだ。しかし、それは不発に終わる。2月26日の東京マラソンでは、元世界記録保持者のウイル ソン・キプサング(ケニア)が世界記録を狙う1km2分54~55秒のペースと、日本人選手を対象にした2分58秒で引っ張る第2グループ、3分01~02秒の第3グループ で展開すると思われた。だが、序盤は下り基調のコースということもあり、最初の1kmが2分46秒、5km通過は14分15秒という超ハイペースの展開に。そのまま30kmまで 14分40秒前後のペースを維持したキプサングが、2時間03分58秒の国内最高タイムで優勝する結果となった。

 一方で日本勢は、予想以上のハイペースに加え、2分58秒で刻むはずのペースメーカーもいなくなる状態になったが、それでも複数の選手が積極性を見せ、井上と設楽悠太(Honda)が10 kmを29分10秒台で通過した。そして、次の5kmを15分10秒前後まで落として自重した井上が、Y・ゲブレゲルギシュ(エリトリア)と最後まで並走できた幸運もあって、先行していた設楽を38kmで逆転。日本人トップに立ち、2時間08分22 秒で全体8位に入った。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る