【月報・青学陸上部】箱根を走れなかった男たち、それぞれの想い (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text by Sato Shun  photo by Nikkan Sports/Aflo


 夏季合宿は故障のために選考合宿から外れ、出雲駅伝にもエントリーされなかった。だが、全日本大学駅伝で復帰し、7区を走った。序盤の5kmを突っ込み過ぎて後半に失速、区間5位と自分の走りができなかったが、すぐに箱根に向けて気持ちを切り替えた。海外のレースにも参加し、富津合宿でも好調を維持して箱根登録メンバーに入った。

 ところが区間エントリーは9区ではなく、10区だった。

「秋山(雄飛)さんの調子がまだわからない状態だったので、それで10区に入ったんですけど、自分が行くなら、最初から9区にエントリーされるかなって思っていたので......。まぁわかる人が見れば僕の置かれた状況が厳しいというのはわかったでしょうね。でも、10区と言われた以上、そこで頑張って区間賞を獲る気持ちで走ろうと切り替えました」

 往路での優勝を果たした後、復路を走るメンバー表に中村祐の名前はなかった。アンカーにはキャプテンの安藤悠哉が入り、中村祐はそのサポートに回った。

「全日本以降、ケガもなくて体調もよく、万全の状態で箱根に挑めたんですが、最後に使ってもらえなかった。悔しいですが、それが今の自分の実力です。大学スポーツでは実績が重視されますし、その実績に監督の信頼も比例すると思うので、その点で走った選手と比較すると、僕は足りなかった。3連覇するチームでは、簡単には箱根に出させてくれない。厳しい現実を突きつけられた気がしました」

 中村祐は厳しい表情でそう言った。

 その視線は、すでに次に向けられている。来シーズンは中村祐たちが最上級生になるが、自分たちの代に確かな手ごたえを感じているという。

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