駅伝文化を学んだニャイロを中心に、
山梨学院大は往路で勝負を決める

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo Tamura Sho/AFLO SPORT

 彼が1年生だった前回、メンバーから外れたオムワンバが涙をこらえながら我慢して応援してくれたのが衝撃だったらしいと上田監督は語る。目指していた大会に出られなくなったことで気持ちが切れるかと思いきや、オムワンバはそんなことはおくびにも出さず"チームのためにやるんだ"という姿勢を持ち続けた。

「そんな姿を見て『なんだ? このスポーツ文化は』と思ったそうです。みんなが選手を支えて動いているということが、いい意味でショックだったようです。だからこそ、このチームのなかで頑張っていきたいと思ってくれているし、そういうチームの風土がなければ彼自身も成長しなかったかもしれない。それがあったから他の選手もニャイロを特別な選手と思うことはなく、上田健太(3年)や佐藤孝哉(4年)など中心になる選手たちがニャイロを囲むように走っているのをよく見る。ニャイロ自身の『みんなとやっていきたいんだ』という意識が、チームを活性化させるひとつの要因になっていると思います」

 走力を見れば、昨年と遜色のない総合力の青学大に対し、山学大も昨年よりは走力、総合力とも向上していると上田監督は言う。だが、青学大対策ができるほどの余裕はなく、自分たちの持ち味をどう生かすかということに集中しなければいけない。

 ただ、山学大は大砲のニャイロをうまく生かせば、王者・青学大を序盤で焦らせるだけの力を持っているのは確かだ。だからこそ上田監督は、前半から全力投球をしていかなければならないと考えている。その中で2区のニャイロについては、「例えば青学大の一色くんと並んでスタートして、ガーッと1分開けられるかというと、わからないですね。実際に前回も服部勇馬くん(東洋大)にやられているわけだし、一色くんも『ニャイロに勝ちますよ』と言っていると思うから。留学生だからといっても必ず勝てるわけではないという域に、今の日本人学生たちもだんだん近づいてきていると思います」と分析する。

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