【月報・青学陸上部】3冠に王手。接戦だからこそ見えた底知れぬ強さ (8ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news

 レース展開やタイムから判断すると、原監督が言うように一色(8区)と田村和(2区)に加え、5、6区の走りが大きかったのは間違いない。また、選手層が厚い、アンカーに大砲がいるなど青学大の強さの要因はいろいろあるだろう。

 だが、もっと大きな視野で見ると、青学大の強さは「健全な競争力」にある。スカウティングでいい選手を集めるだけでは勝てない。大事なことは質の高い選手をいかに成長させていくかだが、その成長を促すのが競争だ。

 練習はその質、量とも豊富で非常に厳しく、駅伝の選考基準となる学内TT(タイムトライアル)はふつうの記録会よりもレベルが高い。駅伝メンバーになるための、苛酷な競争がそこにあるのだ。

 ただ、青学大は競争が厳しいだけではない。競争心が強いと仲間同士ギスギスしがちだが、選手はみな仲がいい。彼らは競争心が強いが、レースになると勝利のために団結する。駅伝に勝つことがチームの共通目標として末端にまで浸透しているのだ。健全な競争があるから仲がよく、目標達成のために自分の力を高める努力をしている......だから、強いのだ。

 祝勝会では、原監督が今回、名古屋名物から命名した「エビフライ大作戦」(どこを切ってもおいしくいける)にちなんで、みなでエビフライを食した。指揮官の作戦を真面目にとらえて、最後はジョークに落とし込む。そんな遊び心があるのも青学の余裕だろう。

「これでふたつ(出雲、全日本)取れた。山対策をしっかりして3冠、箱根3連覇を目指しますよ」

 原監督の高らかな必勝宣言が伊勢路の空に響いた。

(つづき)

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