【月報・青学陸上部】3冠に王手。接戦だからこそ見えた底知れぬ強さ (7ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news

 一色は伊勢路を気持ちよく走っていたが、15kmを過ぎると足に異変が起きた。

「前半、飛ばし過ぎたせいで15kmぐらいから足がつりそうになったんです。最初は左足のふくらはぎから始まって、やべぇって思って走り方を変えたんですけど、今度は臀部とか痛くなって、右のふくらはぎもつってきたんです。全部つったらもう走れないなと思ったので、ラスト3kmからはペースダウンして完走を目指しました」

 なんとかゴールまでもってくれ。走っている間はそれしか考えなかった。沿道のファンが「頑張れ!」「もう少しだ」と声をかけてくれる。

 1年前、先輩の神野大地が2位に終わり、悔し涙にくれる姿を目に焼き付けた。1年後、自らアンカーに立候補した一色はエースの意地とド根性の走りを見せて、トップで戻ってきた。そして、仲間たちの待つゴールへ両手を挙げて飛び込んでいった。2位の早稲田大に56秒差をつける圧巻の走りだった。

「一色くんのスゴさをはじめ、青学大には本当の強さを感じました」

 敗れた早稲田大の相良豊監督は、そう舌を巻いたが、青学大のこの強さは、いったい何なのだろうか――。

 原監督は勝利の要因をこう分析した。

「一色の走りが大きいし、田村もよかったけど、勝てたポイントは5区の小野田と6区の森田のところです。小野田が離されずについていった。あそこで小野田がもう20秒遅れていたら危なかった。小野田がちょっとでも差を詰め、森田がさらに詰めた。ここで差を詰められたことが勝利につながった」

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