【月報・青学陸上部】3冠に王手。接戦だからこそ見えた底知れぬ強さ (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news

 森田は妙高3次選抜合宿の時、原監督が「こいつは来るよ」とベタ誉めしていた選手。選考レースでは12、13番手だったが、原監督が森田を評価するのは腐らずに努力しつづける姿勢だ。森田は中学の5000m記録保持者。高校1年の時には14分18秒84の自己ベストを出したが、それ以降はケガなどがあり、タイムがなかなか伸びなかった。しかし大学2年の7月、世田谷記録会5000mで14分12秒85を出し、自己ベストを更新。さらに10月の世田谷記録会では13分台を出したのである。

「5年間も自己ベストを更新できないと、ふつう腐るもんですよ。でも、森田は我慢してケガにも耐えて自分を乗り越えた。そういう選手は精神的に強い。だから、森田にはすごく期待しています」

 原監督は森田の精神的な強さを評価し、来年は主力になると信じている。その信頼感が、出雲駅伝で快走した茂木亮介や調子が上がっていた田村健人よりも森田を選ぶ要因になった。

 6区の待機所で、森田は緊張していた。

 初駅伝ゆえに無理もないが、こわばった顔を見たサポート役の茂木は「ここで相手を抜いたらヒーローになれるぞ」と笑って声をかけた。森田は「そうですね。ヒーローかぁ」と思わず笑ってしまったという。「茂木さんの言葉で緊張感がほぐれました」とリラックスしてスタートラインにつくことができた。経験のある先輩ランナーのひと言が、初駅伝を走る選手のスイッチをうまく入れたのだ。

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