【月報・青学陸上部】大苦戦の全日本大学駅伝。裏で何があったのか (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news


 中継点前でバスが止まった。原監督と顔を見合わすと表情を曇らせた。

「うーん、3区がちょっと誤算やったな。15秒開いてキャプテンがやってくれるかなぁと思ったけど。今、何秒開いている?」

 マネージャーの小関に聞く。

「今20秒です。(3位の)山梨とは36秒差です」

「早稲田とは差が開いたかぁ。早稲田は調整バッチリだなぁ。あとは山梨さんが来ているからそこだな。8区までに、後続に1分以上差を広げておかないとアンカーが苦しくなる。なんとか早稲田と山梨さんの流れを断ち切らないといかんね」

 原監督は、苦渋の表情を浮かべていた。まさかの展開だった。

 プランでは4区の安藤で突き放し、独走に入る予定だった。だが、安藤の走りが伸びず、逆に早稲田大に離され、山梨学院大には追い上げられている。駅伝はフタを開けてみないと何が起こるかわからないと言われるが、まさにその通りの予期せぬ展開になっていた。 

 目の前を安藤が駆けていった。

「うーん、走らんなぁ」

 原監督は独り言のように呟き、安藤の後ろ姿をしばらく見つめていた。

 監督、報道陣ともにバスに乗り込み、5区の8km地点に向かった。バスのモニター画面には表情を歪め、口を開け、苦しそうに走る安藤の姿が映し出されている。下田につづき安藤にもいったい何が起きているのだろうか。バス内では安藤の不振にどよめきの声が起こる。

 安藤は最後までペースが上がらず、区間5位に終わった。

 トップの早稲田大とはタイム差が1分7秒と開き、一方でアンカーに大砲ドミニク・ニャイロが待つ3位の山梨学院大との差は46秒に広げた。4区を終わって青学大は正念場を迎えたのである。 

(つづく)

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