【月報・青学陸上部】大苦戦の全日本大学駅伝。裏で何があったのか (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo news


 吉永は、緊張していた。

「3区で待っている時、緊張しました。でも、トレーナーの栗城(徳識)さんがこんな緊張できる経験はなかなかない。この緊張も楽しめよと言ってくれて、緊張をほぐしてもらったんです」

 同じ3年生の田村和がラストスパートで競り合ってトップで襷を渡してくれた。「やってやる」と気持ちが高ぶった。しばらくトップで走ったが、1km過ぎに鈴木が前に出ると一気に5秒差をつけられた。

「相手が前に出た時、ついていけなかった。初駅伝で緊張もあって、トップでスタートしたのにいい流れをつなげられなかった。まだまだ力が足りないなぁって思いました」

 中間地点では20秒差まで広げられたが、中継所までに吉永は5秒を取り戻した。早稲田大との差は15秒になっていた。

 4区(14km)は、キャプテンの安藤悠哉(4年)である。

 前々日会見で、原監督は大会のキーマンに安藤の名前を挙げていた。出雲駅伝では5区を担った。最後のラストスパートで襷を握り締めて必死に走る姿は4年生の意地を見せ、アンカーの一色を奮い立たせた。その後も日体大記録会では13分51秒66で自己ベストを更新。競技人生は今年度で最後となり、表舞台で走るのは全日本と箱根の2本だけになったが、「いい練習が積めているので、出雲の時のように自分の力を発揮するだけです」と気負いもなく、ベストの状態で全日本に入ることができた。原監督も「春先のケガや就活で苦労して成長した。全日本でも気持ちの入った走りをしてくれるでしょう」と、安藤の快走を期待していた。

 実際、出足は悪くなかった。

 1kmを2分43秒で走り、5秒ほど差を詰めた。「さすがは安藤、出雲の再現か」と選手たち、監督、関係者は腰を浮かしたことだろう。だが、早稲田大の永山博基がペースを上げると安藤はついていけず、遅れ出した。 

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