【月報・青学陸上部】反骨のランナー・中村祐紀が全日本駅伝にかける思い (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 しかも、その頃はふたりに置いていかれている感がすごくあったんです。ふたりが強いのは認めざるを得ないんですけど、そんな気持ちでいると、一生負けたままになるんで」

 そう言って中村は苦笑した。

 下田、田村和とは同じ3年生で仲がよいが、ライバルとして負けていると思いたくない。根っからの負けず嫌いなのだ。

 出雲駅伝の翌日、全日本大学駅伝のエントリーリストが発表された。自分の名前があることに一瞬ホッとしたが、すぐに気を引き締めた。エントリーリストに入るだけなら昨年も実現したが、ギリギリのところでメンバーから落選した苦い記憶があるのだ。

「昨年は悔しかったですね。出雲に出て2区4位で走って、タイムもそんなに悪くなかったんです。でも、監督に求められた走りができず、自分ももう少しいけたかなって思っていました。それに長い距離の不安もあって『全日本はまだまだ』という感じで補欠になったんです。

 その後、富津合宿でいい練習ができて、世田谷ハーフマラソンで優勝して、監督から『箱根はおまえを絶対に使うから』って言われました。全日本に出られなかったし、負けたのは悔しいですけど、個人的には全日本の期間にいい練習ができたことが箱根につながっていったと思うんです」

 そう語る表情からは、強い反骨心が垣間見える。実際、中村は下田や田村和にようにスラッとしてスマートな青学生が多い中で、やや異質だ。太く強靭なふくらはぎをはじめ、研ぎ澄まされた肉体を持ち、ギラついた雰囲気を発している。「負けたくない」と闘争心を剥き出しで走る姿は美しく、レースを走るというよりも格闘家のように「戦う」というイメージがフィットする。

 その反動か、気分転換は絵を描くことだという。小学校の卒業文集の将来の目標には「画家」と書いたほどで、今も絵が特技である。

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