【月報・青学陸上部】エースの目にも涙。4年生の快走で出雲を制す (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun   photo by AFLO

 田村和が続ける。

「レース前、塁人には『レースを楽しめ。3、4年になったら責任が重くなる。楽しめるのは1年の時だけだから。1位じゃなくても俺と下田で頑張るから』って言いました」

 鈴木は、「その言葉で粘れました」とホッとした笑顔を見せた。

 1区で他大学に差を付けることはできず5位に終わったが、それは原監督の想定の範囲内だった。ただ、鈴木にとっては初の大学駅伝で他大学のトップランナーと走ったことで得るものがあったはずだし、ポテンシャルの高さも見せた。

「箱根の1区を走ることが僕の目標です。今回の走りではまだまだ通用しないですが、このキツさを感じながら走れたことはすごくいい経験になりました。この経験を生かして、次の全日本ではスリーベース、箱根ではホームランを打ちたいですね」
 
 鈴木は、そういうと視線をまたテレビに向けた。小さな画面の中には一色が東海大と優勝争いをしていた。

 6区、出雲駅伝はアンカー勝負になった。 

 安藤から首位で襷を受けた一色は、しばらく東海大のアンカー湊谷春紀(2年)と並走していた。途中、山梨学院大のドミニク・ニャイロ(2年)が最初の600mでタイム差を10秒縮めたというアナウンスが流れたが、1分の差はそう簡単に埋められるものではない。

「安藤が襷を渡してくれるところにテレビが置いてあったんです。(安藤が)三上と競り合って1回2位になって、なんとか最後の粘りを見せてくれって思っていたんです。スタートラインに立つと安藤がトップで入ってきたのが見えて、『あっ、こいつやってくれたな』って思いましたね。タイムも山梨を離してくれたので、周囲の応援もありましたけど、それがあったのでラクに走れました」

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