【月報・青学陸上部】エースの目にも涙。
4年生の快走で出雲を制す

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun   photo by AFLO


 アンカーの一色の声が響く。
 
 安藤の勝ちたい気持ちが強かった分、一色に襷が先に届いた。

「よしっ!」
 
 一色の気合いの言葉が聞こえた。

 安藤は17分43秒の区間新記録で首位を奪い返した。そして、東海大に2秒差、さらに山梨学院大に1分もの大差をつけた。茂木&安藤の4年生コンビが最後の出雲で、大きな仕事をやってのけたのである。

 ゴール地点の出雲ドームには1区を走った鈴木塁人(たかと)、2区で区間賞を取った田村和希が戻ってきた。田村和はレース後、十分にクールダウンしているはずだが、継続してストレッチをしている。大学駅伝は出雲で終わるのではなく、箱根までシーズンは続く。そこまで故障せず、疲労を回復させ、レースを走れる体を維持しないといけない。そのために身体へのケアに余念がないのだ。

 鈴木は安藤の激走をとらえたテレビに釘づけになり、微動だにしなかった。

「安藤さんの走りを見て、ウルウルきてしまいました。すごいです、4年生は。自分も初めての出雲で、本当ならスリーベースぐらいは打ちたかったけど......うーん、内野安打ですね。悔しいですけど、苦しいなりにまとめられたので、ちょっとホッとしています」

 鈴木とのやりとりを聞いていた田村和がツッコミを入れる。

「今日の塁人は神ってなかったな。ふつうの好走だよ(笑)」
 
 出雲駅伝で原監督が考えた青学のキャッチフレーズは「神ってる青山大作戦」だった。広島カープの優勝になぞらえて考えたものだが、田村和の言葉を聞いた鈴木は「ほんと、ふつうでした」と苦笑した。

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