【月報・青学陸上部】2つの寮の
シビアな格差。強さの秘密がここに

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

「6位は悔しいです。一色さんがペー走だったので、なんとか5位以内にと思っていたんですが......。3人が前に出て、あーヤバいなって思って、一度は前に行こうとしたんです。でも、逆に行くと厳しいかなと感じて4着狙いでいったんです。そこで最後、前が落ちてきたら拾えるかなって思ったんですけど、最後の詰めが甘かったですね。自分の実力のなさが出ました」

 そう言って、富田は唇を噛み締めた。

 出雲駅伝に出走できる選手は6名。タイムの良い順になるとエースの一色を除き、茂木、田村和、下田、梶谷、安藤が走ることになる。単純にこの結果だけで最終選考されるわけではないが、しかし「勝負」と位置付けた学内TTに勝つ意味は大きい。それを知るからこその富田の落胆だった。

「今のままの順位では出雲を走れない。世田谷記録会(10月1日)になるのか、学内TTになるのかわからないですけど、次がラストチャンスになります。13分台を狙い、今日負けた選手には絶対に勝ちたいと思います」

 富田は9名のメンバー、そして自分に勝った選手たちへの強烈な対抗心を隠そうとはしない。むしろ剥き出しにして出雲駅伝を走る1枚の切符を奪おうとしている。

「自分は今年2月に二寮に移って、半年間そこにいました。9月に町田寮に戻ったんですけど、今回は二寮でもやれるんだというところを見せたかったんです。そのプライドがあるので、絶対に負けたくないです」

 そう言うと、移ったばかりという町田寮にジョグをしながら帰っていった。

 その後ろ姿を見て、強い選手になるなと思った。自分の弱さを謙虚に認めつつ、負けん気は滅法強い。アスリートとしての伸びシロは走りからだけではなく、個人の性格や意識からも感じられるものなのだ。

 富田のことが気になったのは、伊藤雅一マネージャーが「富田はちょっと前まで二寮だったんです。でも復帰して、ここまで本当によく頑張りました」と語ってくれたことがキッカケだった。第二寮、いわゆる二寮と言われる存在は聞いたことがあったが、一体どういうものなのだろうか。

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