4×100m銀メダル。偉業の裏には積み上げてきた挑戦の歴史がある

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 リオデジャネイロ五輪陸上競技8日目の8月19日は、日本が世界を驚かせた日になった。男子4×100mリレー決勝で100m9秒台や200m19秒台の選手がひとりもいない日本チームが、3走から4走の受け渡しではジャマイカを抑えて先頭に立ち、最後はウサイン・ボルトに突き放されたものの、アメリカを抑えて2位で銀メダルを獲得した(後にアメリカは失格)。

短距離で日本勢が勝負できることを、リオ五輪の舞台で銀メダルを獲得し証明した短距離で日本勢が勝負できることを、リオ五輪の舞台で銀メダルを獲得し証明した 記録は前日の予選で出したアジア記録を0秒08更新する37秒60。世界歴代国別最高記録でジャマイカとアメリカに次ぐ3位という、価値のあるものだった。

 その快挙の伏線は、前日の予選から張られていた。最初の第1組で中国が、アジア記録を更新する37秒82を出してアメリカに次ぐ2位になり、世界選手権2位の実力を見せつけた。だが第2組の日本は、その記録を意識することなく、ボルトを欠くジャマイカを抑えて1位になり、これまでの日本記録を0秒35更新する37秒68を出して、すぐさまアジア記録を奪取した。

 日本陸連の伊東浩司強化副委員長は「中国は予選でアジア記録を出したときに大喜びをしていたが、日本チームはその記録を塗り替えても冷静で平然としていた。そんな姿の違いに頼もしさを感じた」と言う。

 伊東氏が感じたように、選手たちの意識は高かった。山縣亮太は「メダルを獲るというのが目標でしたが、37秒60くらいを出さなければメダルには届かないと思っていたので、そのタイムを目標にしていました」と言い切る。

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