五輪で3人の明暗。男子100m9秒台の壁を最初に超えるのは誰か (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 しかし、予選とは打って変わって、トップスプリンターの圧力に飲み込まれてしまった。スタートで隣のレーンのガトリンが素晴らしいスタートを切ると、少し遅れたケンブリッジは硬くなってしまい、最後までそのガチガチに固まったような走りを修正できずに終わった。

「ガトリンのスタートが速いというのは分かっていたのですが、いざ遅れると硬くなってしまった。ウォーミングアップもよかったので行けるかなと感じていたけど、『ここが勝負だ』という思いも強く、そのあたりが影響したのかもしれない」

 持ち前の柔らかい走りをさせてもらえなかったケンブリッジは、予選よりタイムを落とす10秒17で7位。

「世界のトップ選手と走るのは初めてなので、その意味ではいい経験になったと思います。準決勝は悔しい結果だったけれど、もっとやれそうな手応えはあります。4年後の東京五輪ではファイナルに残りたいと思うし、9秒台を出した状態で五輪に出られるようにしていたいと思います」

 ケンブリッジは続けてこう語った。

「これまで200mもやりたいと思っていたけど、今は100mをもっと突き詰めたい気持ちにもなりました」。元々200mの方が早く結果を出していたこともあり、得意種目という思いもあったが、リオ五輪の準決勝の悔しさでその思いにも変化が起きたようだ。

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