五輪で3人の明暗。男子100m9秒台の壁を最初に超えるのは誰か (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 そんな中でも山縣は、臆することなくスタートから隣のコースのブロメルとほぼ同時に飛び出した。中盤以降は実力者たちに襲いかかられて先行を許したが、力んで崩れることもなく、勝負に参加する走りをして5位に食い込んだ。記録は自己ベストの10秒05。9秒台には届かなかったが、3位のプラスで決勝進出を果たしたブロメルとは0秒04差。五輪の緊張感と強豪たちに囲まれる圧迫感の中でも、しっかりと自分の走りをした結果だった。

 このレースを山縣は、「予選でスタートのいい感覚をつかめていたので、トップスピードになる位置を少し先に伸ばすことを意識して、その通りにできてよかったです。結果としてこの舞台で自己ベストを出せたことは誇りに思うし、4年前の五輪の記録を超えられたことは素直にうれしい。ロンドンでは『世界はまだ1歩先だ』と感じましたが、今回の準決勝では半歩先くらいまでに縮まったと思う」とポジティブに捉えた。

 昨年の秋からウエイトトレーニングでも新たな取り組みをしているが、「今回の結果でそれが正しいことが証明できたのもうれしい」と語る。これからさらに、その練習を継続して成長していきたいという山縣にとっては、自身の目指すべき道筋を明確にさせる大会になった。

 一方、予選では2位という力みのない走りで準決勝進出を果たしたケンブリッジ飛鳥は、準決勝で優勝を狙うジャスティン・ガトリン(アメリカ)やロンドン五輪銀のヨハン・ブレイク(ジャマイカ)などと同組になった。

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