五輪で3人の明暗。
男子100m9秒台の壁を最初に超えるのは誰か

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 10秒01の自己記録を持つ桐生祥秀と、12年ロンドン五輪に続く代表で今年は自己記録を10秒06に伸ばした山縣亮太。そしてジャマイカ人を父に持ち、今年一気に頭角を現して自己記録を10秒10まで伸ばし、6月の日本選手権では初優勝と勢いに乗っているケンブリッジ飛鳥の3人が出場した、リオデジャネイロ五輪の陸上競技男子100m。"史上最強"とも称されて期待を集めた彼らの決勝進出の夢は、残念ながら厚い壁に阻まれて、4年後の東京大会へと持ち越しになった。

日本勢の中では最も決勝進出に近かかった山縣亮太日本勢の中では最も決勝進出に近かかった山縣亮太 その戦いの中で、まずまずの結果を出したのが山縣だった。予選第8組では全組の中で最も強い向かい風1.3mという条件の中、スタートから力みのない加速を見せて、7月に9秒89を出しているアカニ・シンビネ(南アフリカ)に次ぐ10秒20で2位。3位以下の記録上位者8名ではなく、着順で堂々と準決勝進出を決めた。

「緊張はすごかったですが、ロンドンの緊張を思い出して『また帰って来たよ』とつぶやいていました(笑)。レースは集中してスタートできていたかなと思います」

 こう話した山縣だが、準決勝には高い壁が立ちはだかっていた。山縣が入った第2組はウサイン・ボルト(ジャマイカ)に加え、昨年の世界選手権で同着3位になったアンドレ・ドグラス(カナダ)とトレイボン・ブロメル(アメリカ)が揃っていて、決勝への着順進出2位以内は極めて厳しい状況だった。さらに第1組では、3位までが9秒台を出していて、いきなり決勝進出には9秒台が必要という現実も突きつけられた。

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