【月報・青学陸上部】いざ夏合宿へ。充実の記録会で、それぞれの想い (3ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 原監督は厳しい表情で、そう言った。

 叱責を受けた稲村はしばらく公園内のベンチに座り、ぼんやりしていた。選手生命を自ら断った寂しさか、それとも原監督の言葉を心の中で反芻していたのか。いずれにしても夏合宿でマネージャーデビューとなる稲村がどのように成長するのか。ひとつ楽しみが増えた。

 日が落ちたグラウンドは涼しく、心地よいコンディションになった。そのせいか、シーズンベストや自己ベストを記録する選手が続出した。

 21組で走ったキャプテン安藤悠哉(4年)は14分12秒68で1位になり、シーズンベストを更新した。また、23組(最終組)で走った秋山雄飛(4年)も14分07秒85でシーズンベストを出した。

 2人とも今シーズンは、ケガや不調などで自分らしい走りができずに苦しんでいた。エース一色恭志以外、彼らを含め4年生全体は今ひとつ調子が上がらなかった。全日本選手権前には原監督から「4年がちょっとだらしない」と喝を入れられた。

「今の4年生は史上最強といわれた前の4年生と違って、まだ築き上げたものがないし、スパイスが足りない。なんか個人としてガッと立つ感じじゃないんだよね。自分たちが何かを築き上げるんだという断固たる気持ちを持って、自分が主人公になるためにはどうあるべきか。それをしっかり考えないといけない」

 そうした原監督の声に応えたのだろうか。あるいはこれまで上がらなかったコンディションが回復したのだろうか。いずれにせよ、4年生が徐々に調子を取り戻してきたのは非常に大きい。やはり最上級生が元気でなければチ-ムは盛り上がらないのだ。

 その4年生の中で、圧巻の走りを見せたのが茂木亮太(4年)だった。主力が多い最終組でのスタ-トだったが、ラスト200mでスパートをかけ、好調の梶谷瑠哉(2年)、田村和希(3年)を抜き、13分53秒46で1位。5月の世田谷記録会に続いて13分台を出し、またも自己ベストを更新した。端正な顔立ちの茂木がホッとしたのか相好を崩した。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る