日本選手権1万mで悲願の初優勝。悔し涙から4年、大迫傑がリオ五輪へ (3ページ目)

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato
  • photo by AFLO

 実力者たちの思惑が交錯したレースを、大迫は冷静に駆け抜けて圧勝した。4年前のロンドン五輪トライアルでは、佐藤悠基(日清食品グループ)とのラスト勝負を0.38秒という僅差で敗退。五輪代表を逃し、レース後は涙を浮かべながらトラックに拳を叩きつけて悔しがった。日本選手権は4年連続で2位(12~14年は1万m、昨年は5000m)に終わったが、あの日から4年。大迫は格段に強くなった。

「今までより練習はできていて、昨年のように疲れがある状態でもなかった。やっと万全な状態で臨めましたね。米国でやってきたことが、ようやく結果として現れたなかなという感じです」

 4年前、佐藤に敗れたあと、「もっと速くなりたい」と強く願うようになった大迫は、ナイキ本社を拠点にする『オレゴン・プロジェクト』を視察。大学卒業後から米国に拠点を移して、世界トップを目指して、トレーニングを続けてきた。昨季5000mで13分08秒40の日本記録を樹立するなど、トラックで結果を残してきたが、日本選手権だけはどうしても勝てなかった。そこで今回の勝因を大迫に尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「スピードがついたこともありますが、メンタル的にしっかりと気持ちをためられるようになったんです。これまでは抑えきれずに行ってしまうところがあったんですけど、今回は勝負どころまでしっかり我慢できた。精神的な成長がレースにつながったと思います」

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