【月報・青学陸上部】箱根と並ぶ春の大一番、関東インカレでの異変

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun 築田 純●写真 photo by Tsukida Jun

 安藤は、そう言って丁寧に頭を下げて自分の仕事に戻っていった。安藤は2年の時、初優勝を飾った箱根駅伝で10区を走ったが、昨年の箱根駅伝は走れず、悔しい思いをした。大舞台を走った選手の気持ちと悔しい思いをした選手の気持ちを理解できるのは、上に立つ者として大きな強みになる。個性派かつ実力派揃いのチ-ムをひとつにまとめていくのは決して簡単ではないが、神野とは違ったキャプテンシ-でチ-ムをまとめ、より高みに導いてくれそうな気がする。

 10000mは残り3周というところで、トップ争いは中谷圭佑(駒沢大)と一色、鈴木健吾(神奈川大)の3人に絞られた。残り2周の時、中谷がペースを上げた。ここが勝負どころだが一色のペースが上がらない。まだ1周あるので余裕があるのか、それとも勝負どころを考えて我慢しているのか、よく分からないが差が縮まらない。
 
 いつ抜かすのか......。
 
 いつだ、いつだ。そんなことを思ってトラックを見ていたらそのまま中谷がゴールした(28分43秒96)。一色は原監督のいう「強さ」を見せるべきレ-スで勝てなかった(2位。28分45秒33)。下田は8位(29分14秒04)で4月のアシックスチャレンジ(29分31秒88)よりも若干タイムを上げたが、中村は一色らに周回遅れという屈辱で25位(30分09秒41)に終わった。

「だらしねぇレ-ス、よえぇ-」
 
 下田がくやしそうにつぶやく。
 
 中村は無言のまま荷物返却場所で青いビニ-ル袋に入っていたウエアを取り出し、着替えて静かにその場を後にした。

 ミックスゾ-ンでは1位の中谷が大勢の記者に取り囲まれている。2位に終わった一色は苦笑いを浮かべて、一時ク-ルダウンのためにミックスゾ-ンから姿を消した。残念なレ-ス展開だったが、絶対的なエ-スに何が起きたのだろうか。

(つづく)

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