リオ五輪金メダル有力種目。50km競歩・谷井孝行が描くVロード (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 だが、天候は30kmを過ぎたあたりから晴れてくると、気温が20度近くまで上がり、風はさらに強まってきて終盤には会場にある大会の幟(のぼり)の竿が折れた。近所では農業用の大きなビニールハウスが吹き飛ばされる事故も起きるほどの強風が吹き荒れ、谷井の歩きに影響が出た。

「前半は(2km)8分50秒でいったけど強い風の影響もあって体も重く、向かい風の区間で非常に体力を使ってしまった。後半になるにつれて風も強くなったので、さらに体力を削られてペースダウンしてしまいました」

 谷井がこう言うように、36km過ぎからは2km9分台まで落ちたペースをさらに落とし、46km地点では一時、1分23秒差まで離していた2位の荒井広宙(ひろおき/自衛隊)に35秒差まで詰められた。

「3月までは非常にいい練習ができていましたが、思った以上にその疲労があるなと1週間前から感じていて、後半は、そういう疲労が出てきたのかなと考えながら歩いていました。35kmくらいからは後ろの荒井とのタイム差を有効に使おうと、少し体力を温存しつつ、残り5kmは荒井より速く、もしくは同じでもいいから差を縮められないようなレースを考えていました。レースとしてはうまくまとめられたけど、そんな勝負にこだわってしまったのが自分に対する負けというか、ちょっと悔しいところですね」

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