【マラソン】名古屋の激闘を制した田中智美と山下監督の二人三脚 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之/PICSPORT●写真 photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 リオ五輪に向けて、本格的に取り組み始めたのは昨年の夏から。その影響で足底に痛みがある中でも、田中を9月のベルリンマラソンに出場させた。

「痛みを我慢する姿は本当にかわいそうで替わってあげたいくらいだったけど、何があってもやり抜かなければいけないという姿勢は崩したくなかった。致命傷にならなければいいから、とにかく苦しませるしかないみたいな気持ちだった」と山下監督は振り返る。

 陸連の設定記録である2時間22分30秒は意識しなければいけない記録だった。山下監督は「そのタイムへの取り組みはしなければいけないけれど、本人の体を無視してはできないので、どんなに悪くても2時間24~25分を出させるようにしようと考えていた」と言い、その余裕ある考えもまた、今回の結果につながったといえる。好材料としては、後半のペースを前半より上げられたこと。リオ五輪本番でひとつの武器になってくるだろう。

「スタミナが埋まったというのは大きいと思いますね。ただ世界と勝負するためには、35kmから17分16秒に落ちたところを、キルワが16分46秒で行ったように、16分台を維持してほしいですね。コンディションさえうまく仕上げれば、勝たなくても後半の仕掛けにうまく対応できるというか、遅れを大きくとらないところまではきていると思います」

 小原との熾烈な争いを制して、近づいたリオ五輪代表の座。それを本番でどう生かすかは、これからの山下監督との取り組みや、戦術の立て方にかかっている。


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