2016.03.14

【マラソン】名古屋の激闘を制した田中智美と山下監督の二人三脚

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之/PICSPORT●写真 photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 ペースメーカーの設定は、5km16分55秒から17分00秒の予定だったが、最初の5kmを17分03秒、下りが多い10kmまでは17分04秒と遅めに始まった。その後、上り坂になる15kmまでは16分56秒と、安定しないペースで中間点通過を通過した。04年アテネ五輪優勝の野口みずき(シスメックス)は5km過ぎで完全に集団から脱落したが、先頭集団は中間点で10人。30kmまで9人と緊迫感のある展開となった。

 そんな中で小原は集団の前めに立ち、田中は日本人トップ争いのライバルになるだろうと目する木崎良子(ダイハツ)を視野に捉らえる位置で冷静に走っていた。

 そのふたりが意識していたのは、ペースメーカーが外れる30km過ぎからのキルワのスパートだった。予想通り、30kmを過ぎると、キルワは31kmまでを10秒以上も上げて3分13秒にする仕掛けをした。それに最初についたのは小原。田中もしっかり反応し、小原をかわすと31~32kmを3分15秒で走ってキルワを追いかけた。

「もしあそこでキルワ選手に追いつけていたらもう少しいけたかもしれないけど、真後ろにはつけなかった」と田中は振り返る。

 キルワもまた田中が追ってきていることに気づき、さらにペースを上げて引き離そうとしたからだ。その間の5kmをキルワは16分24秒で走り、16分37秒で走った田中を振り切った。

 その走りを見ていた第一生命の山下佐知子監督は、「3分15~20秒くらいなら押していけるだろうなと思っていたけれど、15秒を切ったら持たないかなと思っていました。その範囲内で推移したし、3分13秒に上がっても一瞬だったら大丈夫なので突っ込み過ぎだとは思いませんでした。でも、そのまま押していけばどこかで落ちる。その落ち方がひどいと後ろに抜かれるという考えはありました」と分析する。