東京マラソンの日本勢惨敗。もう、世界との差は埋まらないのか......

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato
  • photo by AFLO

 その反面、実業団選手たちは不甲斐なかった。正月に行なわれるニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)で結果を残すことに満足してしまっている選手がたくさんいるように思える。本気で「世界」と戦う気持ちがあるのか。「実業団」という独自のシステムが、日本のマラソンを低迷させているのかもしれない。

 日本実業団連合は、「Project EXCEED」という取り組みを開始して、男女のマラソン日本記録達成者には1億円(チーム・監督には5,000万円)という報奨金を出すことになった。(指定する国内7大会で男子2時間6分台、女子2時間21分台の記録を出した実業団選手にも1,000万円が贈られる)。

 男子の日本記録は2時間6分16秒。この程度のタイムで1億円もゲットできる「特別ボーナスレース」は世界に存在しない。ちなみに、東京マラソンの優勝賞金は1,100万円で、世界記録を樹立したタイムボーナスは3,000万円だ。

 マネーすら響かない豊かな国、ジャパンの「恵まれすぎた環境」が選手たちから戦う意欲を奪っているのかもしれない。実業団チームでは一般業務を大幅免除されているところがほとんどで、引退後も社員として働き続けることができる。競技で結果を残せなくても、給料は支払われる。

 マラソンに取り組むうえで、金銭的にも環境的にもこれほど恵まれた国はない。実業団選手たちは「ランナー」としての価値がどれぐらいあるのか、世界規格で考えてほしいと思う。そして、サラリーに見合う走りを見せてもらいたい。

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