東京マラソンの日本勢惨敗。もう、世界との差は埋まらないのか...... (2ページ目)

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato
  • photo by AFLO

 20㎞以降、5㎞16分台というスローペースになった日本人集団に変化があったのは、30㎞を過ぎてからだった。22歳の服部勇馬(東洋大4年)がアタックを開始し、30~35㎞の5㎞を14分54秒で軽快に駆け抜け、他の日本勢を引き離す。そして、給水所付近で村山に並ぶと一気に突き放した。

「集団のペースが落ち着いたので、レースが動くところで対応して、できたら抜け出したいと考えていました」という服部にとって、狙い通りの展開になり、35㎞地点では、村山を除く他の日本勢に25秒以上のリードを奪った。「自分が思っている以上に他の選手が付いてこなかったので、気持ちが楽になりましたし、いいフォームを心がけて走っていたんですけど、残り5㎞で体が動かなくなって......」と今度は服部が苦しむことになる。

 30㎞の学生記録保持者(1時間28分52秒/日本歴代3位タイ)で、箱根駅伝2区で2年連続して区間賞を獲得した「学生界のエース」は、40.2km付近で日本人トップから陥落。28歳の高宮祐樹(ヤクルト)にかわされると、もう自分の体をコントロールする力は残っていなかった。

 マラソン3回目(今大会前の自己ベストは2時間15分38秒)の高宮が2時間10分57秒で日本人トップ(全体で8位)に輝いたが、リオ五輪は意識していなかったという。奥山光広監督からも「2時間12分台を狙っていけ」とアドバイスされていたほどで、服部が飛び出したときは、「メッチャ速いな。今日は服部くんの日だな」と、ライバル視していなかった。

 まさかの殊勲に、高宮は「本当に速いのは8分とか9分台。自己ベストを狙って、11分を切っただけで、日本人トップになってしまい、どうしようという感じです」と素直な感想を口にした。

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