「脚が壊れても」。五ヶ谷宏司の東京マラソンにかける思い (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

 彼に刺激を与えた選手はほかにもいる。ロンドン五輪代表の藤原新(ふじわら・あらた/ミキハウス)だ。

 大学を卒業した後も陸上を続けるかどうか迷っていた五ヶ谷が、JR 東日本ランニングチームに入るのを決めたのは、藤原と一緒に練習できるという理由からだった。だが、入寮してすぐに藤原と一緒に食事に行くと、突然「俺もう辞めるから、欲しいものがあったらあげるよ」と言われ、「話が違う!」と絶句したという。

 その後もフリーになった藤原と、ジョグをしたり食事をしたりする中で「一緒に練習をしなくて良かった」と思うようになった。「天才型の彼とは感性も練習スタイルも違う。自分には自分に合った方法があるのでは」と考えるようになったのだ。

 そんな自分のスタイルを考えさせてくれた先輩に対し、自身のマラソンへの意識を高め、目標にもなったという選手が今井正人(トヨタ自動車九州)だった。五ヶ谷が大学に入った年に今井は順天堂大4年で、すでに"山の神"として君臨していた。

「1年の関東インカレが終わったあと、僕はなぜか東京出身の人たちと打ち上げの席にいたら、同じ店に福島県人会に出ていた今井さんがいて、当時10000mが30分台の遅い選手だったにも関わらず、ずうずうしく話しかけて、『僕も山を走るんでよろしくお願いします』と言ったんです。その後実際に箱根で5区を走ることになって中継所に行ったら、今井さんが『本当に走るんだ』と声をかけてくれたんですよね」

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