「もう大失速しない」福士加代子をリオへ近づけた鬼のような練習

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 1月31日の大阪国際女子マラソンで福士加代子が輝いた。

過去あまり相性のよくなかった大阪マラソンで、結果を残した福士加代子過去あまり相性のよくなかった大阪マラソンで、結果を残した福士加代子 レースは、30km過ぎから福士の独走になった。しかし、福士にはまだ終盤失速の懸念が残されていた。それもそのはず、過去08年と12年のこの大会で30km以降に大失速したシーンが、いまだに見る者の脳裏に焼きついているからだ。

 福士自身もレース後、「30km以降も不安で、『このあと落ちていくのかな』という思いもあって......。だから給水を取るたびに『行け、行け!』と思って走っていました。それに25km過ぎから痛くなってきた足の裏が、30km以降どんどん痛くなってきて。最後は『いいや、折れちゃえ』と思って走っていました」と笑いながら振り返った。

 一方、指導する永山忠幸監督はレースをこう見ていたという。

「福士にとって5km16分40秒というペースは、20kmまでなら楽にいけるペースなんです。心配したのは25kmでペースメーカーがいなくなったら、勝てると思って気持ちが甘くなりペースダウンするんじゃないかということでした。30kmまでペースメーカーが走ってくれたのは助かったけれど、30km以降でライバル視する選手がいてくれたら、もっとタイムが良くなったと思います。今日は単独になったのでヤバいと思いましたね。だから日本陸連が設定した2時間22分30秒を突破させるために、ラスト600mくらいのところでサバを読んで『5秒足りない』と声をかけました」

 ライバルがすべて脱落した25kmから30kmまでは、ペースメーカーが気を使いながら1km3分20秒前後のペースで引っ張ってくれ、その間の5kmは16分47秒で走った。ひとりになってからも35kmまでは3分20秒台中盤のペースを刻むと、それ以降も3分30秒を切るか切らないかのペースを維持。そして「監督から5秒足りないと言われてダッシュしました」と笑う福士は、2時間22分17秒でゴールラインを駆け抜け、タイムを確認すると「やったー!」と喜びの声を上げた。

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