箱根はどうなる!? 青学大の3冠を阻んだ東洋大の「駅伝力」

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

「その1秒をけずりだせ」
 
 東洋大はチームテーマを体現したような走りだった。
 
 全長106.8kmで争われた全日本大学駅伝。初優勝を飾った東洋大は、10月の出雲駅伝を制した優勝候補の青山学院大と激しいトップ争いを展開した。何度も並ばれ、リードを許した場面もあったが、そのたびに中継所の手前で突き放す粘りの走りを見せた。

青山学院大とのデットヒートを制した東洋大青山学院大とのデットヒートを制した東洋大

 それが顕著だったのは6区の野村峻哉。終盤、青山学院大の渡邉心に一度は引き離されるも、ラストの猛スパートで逆に10秒のリードを奪った。4区途中で青山学院大に並ばれて以降最大の差をつけると、完全に"流れ"が変わる。
 
 次の7区、東洋大の堀龍彦が区間賞の快走を見せ、青山学院大は突き放される。ひと区間で17秒差をつけられ、最終8区の神野大地にタスキが渡ったときには、27秒差を追いかける展開に。それでも、7区終了時で27秒のビハインドは、"逆転のシナリオ"として十分に射程圏内のはずだった。
 
 レース前日、青山学院大の原晋監督は、「アンカーの神野は1分差なら逆転できる。4区終了時で20秒差なら大丈夫でしょう。でも、5区終了時で30秒負けていると、1区間あたり20秒ずつ負ける危険があるので、アンカーに渡ったときは1分以上の差になる。そうなると視聴率が上がりますよ(笑)」と話していた。

 しかし、ケガからの復帰戦となった神野大地のペースは最後まで上がらない。鉄紺のタスキに近づくことはできず、逆に1分4秒差をつけられ2位でフィニッシュ。青山学院大としては過去最高順位でのゴールとなったが、神野の目には涙が光った。

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