陸上・男子短距離がリオ五輪メダル獲得のために、見直すべき現実 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 主力のふたりがそんな状態だったにも関わらず、ハツラツと走っていたのが16歳のサニブラウンだった。予選、準決勝とも一番外側でカーブもゆるやかな上、他の選手が気にならない9レーンとなった。予選の20秒35は、自己記録の20秒34が標高995mで平地より気圧も低い準高地で出したことを考えれば、ほぼ自己ベストといえる記録。準決勝では予選に続いて当たったジャスティン・ガトリン(アメリカ)を含め、19秒台2名と20秒0台もふたりいる中で「見えない疲れが残っていたので、前半はぜんぜん乗り切れなかった」と言うが、20秒47で走って5位。運にも恵まれる大物ぶりを存分に発揮し、4×100mリレーでの大爆発を期待させた。

 ところが28日の4×100mリレー予選にはサニブラウンの名前はなかった。そのうえ高瀬も準決勝で右太股に肉離れを起こしたため、起用できなかった。

「本来なら1走が高瀬で2走が藤光、3走が大瀬戸一馬(法政大)で4走は谷口耕太郎(中央大)かサニブラウン。予選の様子を見て勝負に行くなら、決勝はサニブラウンにするつもりだった」と日本陸連の苅部俊二男子短距離部長は言う。

 だが高瀬が外れたために大瀬戸を1走に回し、控えの長田拓也(法政大)を3走に使うことになった。さらに日本チームはまだ入賞者を出していないという状況もあり、安全策をとってバトンパスに不安のあるサニブラウンではなく谷口を4走に使ったのだ。

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