競歩・鈴木雄介「リオ五輪までは、もう記録も優勝も狙わない」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 それは指導する今村文男コーチにそれとなく言われてきたが、なかなか持てなかった意識だった。世界記録を出して記録の本質を知った今だからこそ、そんな気持ちにもなれた。

「リオではレースを楽しむだけでなく、そこに向けた準備も楽しむくらいにならないといけないですね。今回も7月くらいまでは楽しめたけど、痛み止めを飲み始めてからはだめでしたから」

 こう言って笑顔を見せる鈴木は、インタビュー直前にたまたま出会った高橋尚子さんからこう声をかけられた。

「今回の棄権を見て、私が優勝を狙っていた99年世界陸上で前日に欠場を決めた時と同じだと思った。あの時は一晩中泣いたけど、だからこそ翌年のシドニー(五輪)で金メダルを獲れたのだと思う。それをひと言伝えたかった」と。

 今、同じ状況にいるからこそ、その言葉は鈴木の心の中にしっかりと染み込んだ。

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