走り高跳びの新鋭・戸邉直人193cm。日本人初の2m40台へ

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 こう話していた戸邉だが、昨年6月の日本選手権は悪天候に対応できず2m20で3位と悔しい結果に終わった。だが目標のひとつだったダイヤモンドリーグ出場は7月のモナコで果たし、2m30を跳んで8位に。9月にはダイヤモンドリーグ最終戦のブリュッセル大会にも出場して2m31で7位と、安定した結果を残した。

 メダル獲得を期待された9月のアジア競技大会では、ブリュッセル大会でアジア記録の2m43を跳んだばかりのムタズ・エサ・バルシム(カタール)との戦いが注目されたが、2m25で5位に止まった。初めてヨーロッパを転戦した世界挑戦の疲労が、思った以上に溜まっていたのだろう。

 その悔しさを心の中に秘め、今年も1月中旬から約1カ月間、昨年と同じ室内の練習環境が整っているエストニアを拠点にして練習をしてきた。練習中に疲労性のアキレス腱炎になってしまい、試合は2月4日のスロバキア大会に出場したのみで、記録は2m25に止まったが、「ケガで走り高跳びの練習がほとんどできていない中で25を跳べたのは収穫。痛みがなければ感覚的には30を跳べたと思うから、しっかり準備ができれば30台半ばは難しくないと感じた」と手応えを得ている。

 93年のハビエル・ソトマイヨール(キューバ)の2m45の世界記録がいまだに残る男子走り高跳びも、13年にボンダレンコとバルシムが00年以来の2m40台をマーク。昨年はその二人に加えてイワン・ウホフ(ロシア)とデレク・ドロウイン(カナダ)、アンドリー・プロトセンコ(ウクライナ)が2m40超えを果たして活況をみせている。

 そのハイレベルな争いに加わろうとする戸邉は、最大の目標である20年東京五輪でのメダル獲得のためにも、これまでの日本人選手にはいなかった193cmの長身を生かし、今年から一気に記録を伸ばしていきたいと考えている。

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