走り高跳びの新鋭・戸邉直人193cm。日本人初の2m40台へ

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO

 昨年の冬もエストニアへ1カ月間出かけた。その時は試合がメインだったが、レベルの高い選手と試合をする中で、日本にいた時は遠く感じていた世界最高峰の大会であるダイヤモンドリーグが身近に感じられたという。この記録を跳べばひとつ上のカテゴリーの大会に出られるという延長線上にダイヤモンドリーグが見えてきて、記録に対する意識も高くなったという。

 そんな経験を積んで昨年は、シーズン中の海外遠征にも積極的に挑戦した。国内だけだとライバルも少なく2m20台中盤で優勝が決まってしまい、次に挑戦するのは日本新記録の2m34ということになる。だがレベルの高い試合ではその記録ではまだ決着がつかないことがほとんどだ。ハイレベルな戦いを経験することで、トップ選手の調整の仕方や、高さに対する意識、勝負の駆け引きなど学べることが多い。昨年5月のゴールデングランプリ東京で、勝負の流れの中で日本新記録の2m34に挑戦し、惜しい跳躍をしたことも自信になっている。

「走り高跳びでは一発を狙うのも時には大事だけど、どれだけ高いレベルで安定させていけるかも重要だから。世界と戦える目安になる2m35を常に狙うというより、2m30を安定して跳べるようにして、その中で35が出ればいいという考え方をしていくのが大事だと思います。技術をドンドン突き詰めていけば、これまでの日本選手が目指していた職人芸みたいな域に達するかもしれないけど、今はそこに目を向ける時ではなく、より確実に2m30以上を跳ぶために必要なものを考えていくべきだと思っています」

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