【箱根駅伝】5強のレース戦略と最終メンバーを読む (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • フォート・キシモト●写真 photo by PHOTO KISHIMOTO

 それに対してライバル校は、「村山謙太(駒大)と紘太(城西大学)兄弟の1区のダブル起用はあるか?」と疑いながら、それぞれ思惑を持った起用をしてきた。東洋大は、安定感があり、酒井俊幸監督が「誰がきても確実に上位で走れる」と評価する田口雅也を起用。一方の早大は、渡辺康幸監督が1区候補にあげていた選手ではなく、前回10区の中村信一郎を、本人の直訴を受け入れて起用した。

 早大は本来なら使いたかった柳利幸ではなく、全日本では3区で区間15位と失速しながら、その後の上尾シティハーフでは1時間02分30秒の自己新記録で2位と調子を上げている中村にした。駒大が中村匠伍を起用すると見た渡辺監督は、前回のようにスタートからハイペースになることはなく、落ち着いた展開から中盤以降のスパート合戦になるだろうと考え、それにも対応できて大差を付けられないだろうという期待から、一か八かで柳に賭けるのではなく、中村で安全策をとったと思える。

 それに対して下克上を狙う明大と青山学大は、駒大・村山の起用を警戒した区間エントリーをしたと言える。明大の横手健は高校時代からスピードランナーと期待されていた選手。昨年までは故障で苦しんでいたが、今シーズンは春から好調で、全日本では5区で区間新を樹立。国際千葉駅伝でも日本学生選抜で3区を走り、村山紘太に4秒差の区間4位と、トップレベルの選手にも対抗できる力を見せている。

 一方、青学大は秋山雄飛をエントリーしたが、原晋監督は往路・復路ともに2名ずつ入れ換えると語っており、全日本2区区間3位で復活の走りを見せたスピードランナー、久保田和真の起用を示唆しているという。

 久保田が絶好調なら、スピードと切れ味で駒大の中村と張り合うことも可能。原晋監督は「勝負の年」とも考えている来年もにらみながら、駒大とほぼ同じくらいで中継して2区で駒大の村山謙太に引っ張ってもらえれば、一色恭志がその能力をさらに開花させるかもしれないという期待があるのかもしれない。

 2区以降をみれば、駒大は、村山謙太が絶好調なら他大学のエースと競り合っても1分差をつける可能性を持っている。その上で3区には補欠に回っている2年生エースの中谷圭佑を起用。11月の上尾シティハーフでジュニア日本歴代3位の1時間02分18秒を出して期待される4区の工藤有生とともに後続との差を広げれば、馬場翔大が余裕を持って走れ、往路優勝を手にできると踏んでいるのだろう。

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