1964東京五輪から50年。記録はどれだけ縮まったのか?

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva photo by Getty Images

 一方、タイムで争う競技ではなく、長さや高さで勝負する陸上競技の世界記録を見てみよう。たとえば、男子走り幅跳びの世界記録は、1991年に東京で行なわれた世界陸上でアメリカのマイク・パウエルが出した8.95メートルだ。1964年当時の世界記録は、アメリカのラルフ・ボストンが持っていた8.34メートル。その差は61センチである。

 男子走り高跳びの世界記録は、1993年にキューバのハビエル・ソトマヨルがマークした2.45メートル。東京オリンピックで金メダルを獲得したのは、2.28メートルの当時世界記録を持っていたソビエト連邦(現ロシア出身)のワレリー・ブルメルだった。世界記録は50年前から17センチ伸びたわけだが、当時の跳躍スタイルは、「ベリーロール」。1968年のメキシコ・オリンピックでアメリカのディック・フォスベリーが「背面跳び」を世界大会で最初に実施したことにより、走り高跳びの記録は飛躍的に伸びた。

 また、男子棒高跳びのほうは、1994年にウクライナのセルゲイ・ブブカがマークした6.14メートルである。1964年当時の世界記録は、アメリカのフレッド・ハンセンの持つ5.28メートル。この50年間で88センチも世界記録が伸びているが、ポールの材質の進化によって飛躍した側面もあるだろう。

 そして、男子ハンマー投げは、1986年にソビエト連邦(現ウクライナ出身)のユーリ・セディフが記録した86.74メートルだ。東京オリンピックでは、ソビエト連邦(現ベラルーシ出身)のロムアルド・クリムが69.74メートルのオリンピック新記録で金メダルを獲得。銀メダルに終わったハンガリーのジュラ・ジボツキーは翌年に73.74メートルの世界新記録を樹立するが、それでも現在との差は13メートル。室伏広治の持つアジア最高記録(84.86メートル)とも10メートル以上の差があるのだ。

 これらを見ても分かるとおり、この50年間で陸上競技は、どの種目でも目覚しい進歩を遂げた。ただ、長さや高さを競う主な競技では10年以上、世界新記録が生まれていない。2000年以降で世界新記録をマークしたのは、2008年にチェコのバルボラ・シュポタコバが72.28メートルを記録した女子やり投げ、2009年にロシアのエレーナ・イシンバエワが5.06メートルをマークした女子棒高跳び、2014年にポーランドのアニタ・ヴォダルチクが79.58メートルを放った女子ハンマー投げ……ぐらいだ。男子の世界は、もはや頭打ち、ということなのだろうか。

 まだまだ歴史を振り返ると、様々な違いが見えてくるのだが、ざっと50年前と現在の世界最高記録を比較してみた。6年後――、2020年に東京オリンピックが開催されるころには、どこまで記録が伸びているのだろうか。そんな想いを巡らせてみるのも、オリンピックの楽しみ方のひとつだ。

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