1964東京五輪から50年。記録はどれだけ縮まったのか? (2ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva photo by Getty Images

design by Unno Satorudesign by Unno Satoru 2013年4月、織田記念に出場した当時高校3年生の桐生祥秀は、日本歴代2位となる10秒01をマークした。これにより、ヘイズの出した当時の世界タイ記録(10秒06)を上回るタイムを持つ日本人選手は、50年間で4人も生まれている(1998年・伊東浩司=10秒00、2001年・朝原宣治=10秒02、2003年・末續慎吾=10秒03)。半世紀をかけて、日本人は100メートル走で50年前の世界記録レベルに達したと言えるだろう。

 また、走る距離が長くなると、50年間で世界記録のタイム差も大きくなるのではないだろうか。そのように考え、男子10000メートルと、男子マラソンの記録を振り返ってみた。東京オリンピックの男子10000メートルでは、アメリカのビリー・ミルズがオリンピック新記録となる28分24秒4で金メダルを獲得。当時の世界記録(28分15秒6)を持っていたオーストラリアのロン・クラークは銅メダルに終わった。そして現在、男子10000メートルの世界記録は、エチオピアのケネニサ・ベケレが2005年にマークした26分17秒53だ。つまり、10000メートル走の世界最高タイムは50年間で1分58秒07も縮まっている。

 となると、1964年の東京オリンピックで現在の世界記録が生まれていたら、約744.6メートルもの大差でミルズを引きちぎってベケレがゴールすることになる。つまりその距離、陸上のトラック2周弱だ。50年前の金メダリストが周回遅れになるほど、世界記録は大幅に更新されているのである。ちなみに昨年、ロシアで行なわれた世界陸上での男子10000メートルの参加標準記録は、A標準が27分40秒00、B標準が28分5秒00。ミルズの持ちタイムでは、今の世界陸上には参加できない。

 では、男子マラソンはどうだろう。東京オリンピックで金メダルを獲得したのは、「エチオピアの英雄」アベベ・ビキラである。アベベはこのレースで、それまでの世界記録を1分44秒も縮める2時間12分11秒で優勝し、五輪2連覇を達成した。円谷幸吉が銅メダルを獲得したこともあり、アベベの圧倒的な走りは多くの日本国民の記憶に刻まれたことだろう。

 だが、東京オリンピック開催からちょうど50年経った2014年9月、ついにマラソンの世界は2時間2分台に突入した。ベルリンマラソンでケニアのデニス・キプルト・キメットが2時間2分57秒で優勝し、新たな扉を開けたのである。東京オリンピックでのアベベとのタイム差は、9分14秒。世界記録を樹立したときのキメットが東京オリンピックを走っていたら、約2947メートルもアベベを引き離して国立競技場のテープを切ることになる。約2.9キロとは、ざっと国立競技場から渋谷のハチ公前までの距離だ。もちろん、マラソンという種目は、特にコースの違いや気候の変化によってタイムが大きく影響するため、両記録を単純に並べて比較はできないが......。

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