【箱根駅伝】本番を見据えて予選を通過した山梨学院大

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 チームとしてはトップ通過という目標もあったが、敢えてリスクのある走りをさせたのは「攻めていかなければ新しい発見はない」という考えからだ。夏場からしっかり走り込んでいたので、苦しくなっても大崩れはしないで踏ん張ってくれるだろうという選手への信頼もあった。それくらいの走りをしなければ本番では勝負できないということだ。

 そんな山梨学大のプラス要素は、5000mで13分台や14分10秒台の記録を持つ、昨年の全国高校駅伝で優勝した山梨学大附属高校の主力が5人も入ってきたことだ。今回、1年生は誰も使わなかったが、2週間後の全日本大学駅伝には市谷龍太郎をエントリーしている。

「1年生の場合、高校時代は5000mを走れればいいという練習しかしてなかったんです。だから今は先のことも考えて、20㎞を走るための走り込みは急激にやらせないでじっくり育てていこうという方針です。その中でも市谷の調子が上がってきたし、全日本には10㎞区間もあるのでエントリーしました。他の選手はまだ、箱根には間に合うかどうかというところですね。ただ、2人くらい入ってくる可能性はあると思いますね。そうすればチームの色や雰囲気も変わってくると思います」(上田監督)

 前回の箱根駅伝での途中棄権という悔しさと、その後も選手が気持ちを切らさずに最後まで走り切ったという自信。さらに実力のある1年生の加入による刺激で上級生たちの意識が高くなったことで、夏場から箱根で上位校と競り合うことを目標にした練習ができたと言う。オムワンバや井上を中心に、箱根で上位を狙う準備はできている。

 一方、山梨学大と同じように2週間後に全日本大学駅伝を控えながら、10時間07分11秒で1位通過を果たした神奈川大の大後栄治監督は、「予定より2分遅かったですね」と苦笑した。チームトップの柿原聖哉(4年)は59分17秒で全体の4位。主力のひとりである我那覇和真(3年)は1時間0分10秒で、それ以下は4人が1時間0分台、5人が1時間1分37秒以内というまとまった結果だった。

「1年生も3人いたから、ここでしっかり20㎞を走り、ラスト5㎞がどうなるかを見極めて次からの練習に活かすのが目標でした。シード権狙いを戦う力はついていると思うけど、もう少し上を目指すには主力選手が最初の5㎞を14分台で入れる力は必要だし、それ以外の選手もキッチリ15分そこそこで入れる走力は必要不可欠。それを意識していました」(大後監督)

 危機を伝えられていた中央大が7位で本戦に進出し、常連だった東京農業大や法政大が落選。そして創価大が初出場という結果になった予選会。だが、上位校は本番の箱根を見据えた戦いを着々と進めていた。

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