【陸上】桐生祥秀。底力を発揮して日本人初の銅メダル

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 7月22日にアメリカのユージーンで開幕した世界ジュニア選手権。100mに出場した桐生祥秀は3位入賞を果たし、日本人初のメダルを手にした。しかし、そう簡単にメダルを獲得できたわけではなかった。

万全とはいえない状態でも銅メダルを獲得した桐生祥秀万全とはいえない状態でも銅メダルを獲得した桐生祥秀 初日の100m予選で桐生がライバルと目するトレイボン・ブロメル(アメリカ)が第6組に登場。ブロメルは追い風0.7mの中、鋭いスタートから飛び出すと最後の20mは流して10秒13でゴールと、ダントツのトップタイムを叩き出した。

 その走りを見て桐生は「速いですね、流して10秒13ですから......」と素直に評価した。

 今季ブロメルは、5月に追い風4.2m参考記録ながら9秒77を出しているが、それ以外のレースでも、6月13日の9秒97を筆頭に、10秒0台を5回、10秒1台を5回と常に高いレベルの走りをしている。

 対して桐生はスタートがやや遅れたが、「40mくらいでいけると思ったから、2次加速まではしないでそのまま流した」という走りで、向かい風0.5mの中10秒40の1位通過。6月に足底を痛めて以来、走り出したのは7月に入ってからでギリギリ間に合った状態。久しぶりの試合でレース感を確かめるような走りになり、ブロメルとの差は大きかった。

 だが準決勝でその差が一気に縮まる。予選の後には「一緒だと力んでしまうかもしれないから、準決勝はできればブロメルとは別の組の方がいいですね。リラックスした状態で2次加速まで入る、というのをやっておきたいですから」と話していたが、予選は全体の11位通過だったため、準決勝で同走になったのだ。しかも桐生が5レーンでブロメルは6レーンと隣り合うことに。

 それでも「予選のあとでスタートの3歩目までを修正した」と土江寛裕コーチが話すように、桐生はスタートからブロメルと互角の走りをした。60m付近ではブロメルより前に出たように見えた。

「ブロメル選手にくっついていけばいけると思った。60mまではうまくいったけど、他にも2人選手がいたのでビックリしたというのはあります」と言い、そこから力んで、走りを崩し、ブロメルに0秒09差をつけられる10秒38で4位という思わぬ結果に。結局、着順での決勝進出はならなかったがタイムで拾われ、全体4番目の通過で決勝進出を果たした。

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