【陸上】桐生祥秀ら若き男子短距離陣、好材料を残し来シーズンへ

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • pohto by YUTAKA/AFLO SPORT

「4月29日に10秒01を出したあとは、『その記録を超えなければいけない』という気持ちがどこかにあったんです。だけど夏を過ぎてから『そういうのは大学に行ってから超えればいい』という気持ちになりました」という桐生の今季は、激動の年だった。一気に注目され、それまでは憧れていただけの大会にもすべて出場することにもなった。

「本当にいっぱいレースに出ましたね」と笑う桐生は、「織田記念の時は体も軽かったので記録を出せたけど、その後はどの大会に向けて調整すればいいのかわからなくて、とりあえず走って10秒1台は出さなければ、という感じでした。でも4月以来10秒0台を出していないので、これからはまず9秒台ではなくて、10秒0台や10秒1台前半をコンスタントに出していって、そこで何かあったら9秒台という感じで行きたいですね」と言う。

 そんな桐生が進学先に選んだのは東洋大だ。ナショナルトレーニングセンターや国立スポーツ科学センターも近い環境。そこで成長したいという気持ちがあったから選んだと言う。さらに同大学には水泳の萩野公介や山口観弘もいる。「世界で戦っている人たちが近くにいるので、それに負けずに頑張りたい」と心を引き締め、9秒台へ向けての道を歩み出そうとしている。

 桐生が出場した国体ではなく、東アジア大会出場を選んだのは100mと200mのエースである山縣亮太(慶応大)と飯塚翔太(中央大)だ。10月7日から中国の天津で行なわれた陸上。寒さはなかったものの、空気も悪く好条件とはいえない大会だった。

 世界選手権の100m予選で右太股裏側の肉離れを起こしリレーを欠場した山縣は、帰国後1週間休んで練習を再開。9月6日からの全日本インカレに出場し、その後は早慶対抗戦に出場してこの大会を迎えた。しかし2日目の100mでは中国の蘇炳添(スー・ビンチャン)と10秒31の同タイムながら、1000分の2秒競り負けて2位に止まった。

「早慶戦の前に腰を痛めたのが誤算だったが、その後はしっかりトレーニングもできていた。海外の試合は結果を残すことに価値があるので、今回の結果はすごく悔しいですね」

 こう話す山縣は今シーズンを振り返って、日本選手権で勝ち、ユニバーシアードでもメダルを獲得したが納得のいくシーズンではなかったという。

「自分が求めるのは順位とタイムがともなった選手なので、それに関しては納得していませんね。速い選手や強い選手は、順位もしっかりとってくるので......」 

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