【世界陸上】リオデジャネイロ五輪へ、期待を抱かせてくれた若手たち (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 そんな貴重な経験をした桐生のように、リオデジャネイロ五輪に向けて、大きな一歩を踏み出した選手がいる。その筆頭が、男子棒高跳びの山本聖途(21歳)だ。昨年の日本選手権では第一人者の沢野大地と、雨の中延々と続いたジャンプオフを制して初優勝を遂げる勝負強さをみせた山本。今回の決勝でも5m65を3回目にクリアすると、続く自己ベストタイの5m75も3回目で成功させる粘り強さを見せて、6位入賞を果たした。

 その好結果の裏には、昨年のロンドン五輪がある。初めての大舞台で頭の中が真っ白になり、記録なしで予選敗退となる屈辱を味わった経験だ。

「ロンドン五輪は本当に悔しかったし、同じミスは2度としたくないと思った」と話す山本は五輪後、意識して体幹部を強化。元々助走のスピードをポールに伝えるのがうまい選手だったが、体重も増えて反発力が強い、硬いポールを使えるようになったことで跳躍も安定し、高いレベルの記録を常に出せるようになった。

 だからこそ今回も、2度の失敗で追い込まれても不安になることはなかった。「試合前の跳躍練習もそうだけど、こっちへ来る前の試合でも、普段の練習でも跳べていて自信はあった。普通に跳べばクリアできると思っていました」と、危機にも動じることなくきっちりと跳躍を修正して結果を出したのだ。

「6位が決まった時は嬉しかったけど、冷静になると悔しかったですね。ピットの横で優勝争いを見ていたときも、『僕はあそこのレベルで試合をするつもりで来ていたのに』と悔しかったし、『2年後(の世界陸上)は絶対にこの選手たちと、このレベルで戦いたいな』と思いました」

 2年後にはそのレベルに達し、3年後のリオデジャネイロ五輪でメダル争いに加わるためには、と問うと、「もう少し筋力をつけて体重を増やし、スピードや技術にも磨きをかけていかなければいけない」と平然とした表情で言う。

 実は今大会も2週間前に腰を痛めて、体調が万全ではない中で出した記録だった。

「これから勝負するためには、現在より硬さも長さももう一段上のポールを使いこなせないといけない。今回は万全ではない状態ながら、今持っている一番硬いポールを使えた。だから体調が良くなれば、その上のポールも使えると思います」と自信を持つ。

 山本はこの大会で、入賞以上の大きな自信を得たはずだ。

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