【世界陸上】福士の銅メダル、木崎の入賞に影響を与えた野口みずきの存在 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純/アフロスポーツ●写真 photo by Tsukida Jun/AFLO SPORT

 3位になった福士加代子とは、ボルダーとサンモリッツで約2ヶ月間も合宿を共にした。最初のボルダーでは野口の練習にはまったくついていけず、サンモリッツでは練習を別にしたという。それほど練習での差は大きかったのだ。

「野口さん自身も、福士さんと一緒に合宿をやることで刺激になったと思いますね。だからいつもよりテンションも高くなって、練習自体もすごく良くできたと思う。でもその分、気づかないところの疲労が抜けきれていなかったところがあったと思うんです」(武富氏)

 日本陸連は今回の女子マラソンの目標を、近年の世界大会の結果などを見て"入賞"とした。だが、03年の世界選手権では銀メダルを獲得し、その翌年のアテネ五輪では金メダルを獲得している野口にとって、9年ぶりの世界の場だとはいえ、入賞で満足するはずがない。ケガをしないようにと細心の注意を払っていながらも、納得できる練習を積み重ねていれば当然、欲も膨らんでくる。そんな高揚感が、気づかないうちに体の隅に、疲労を残してしまうという結果につながったのだろう。

 それも考えてみれば、プラスの意識が過剰になり過ぎての失敗であり、まだまだ自分が走れることを実感しながらの失敗だった。その点では彼女自身も今回は失敗をしたが、そこまでの過程はプラスに捉えているはずだ。

 そんな野口の失速と相反するように、プレッシャーを感じずリラックスして自分の走りに徹した福士は、銅メダルを獲得。そして「10kmまでは体が重くて、先頭集団についていけなかった」という木崎良子も、粘りきって4位入賞を果たすという精神力の強さをみせたのだ。

 ただレース自体、スタート時で27℃という高気温にも係わらず、ストラネオが果敢に引っ張ってくれたことで、実力のあるケニア・エチオピア勢に余計な力を使わせ、次々と脱落させるような展開になったこともプラスに働いた。そして早々に集団をバラバラにさせたことで、追走してくる可能性のある選手たちの気力と体力を奪い取ってくれたことも、木崎が4位を確保できた大きな要因でもある。

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