【陸上】初の海外レースへ挑む桐生祥秀へ、世界を知る男たちからの助言 (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 朝原は、ジャマイカのアサファ・パウエル(元世界記録保持者)のコーチから「狙ってタイムが出たことがあったか」と聞かれ、さらに「タイムというのは体調と様々な条件がすべて合って出るものだから、狙うものではない」と言われたという。そして、「ジャマイカ人でもそうなんだ」と思ったと笑う。要はこれからの桐生も、そんな気持ちを持ちながら、トップレベルの中でいかに経験を積み重ねていけるかだ。

 年下の桐生にダイヤモンドリーグ出場では先を越される形になった山縣は、「以前は海外に行くことに意味を感じていなかったが、今年の初めからこれからの自分に何が必要かと考えて、海外の試合に出る必要性を感じ始めました。桐生くんに招待状が届いたと聞いてすごいなと思ったけど、それだけ彼の出した10秒01のインパクトがすごいということ。僕の10秒07とはこんなに違うんだと実感しました。彼の試合をものすごく大事にする姿勢と、試合こそが一番の練習になるという考えには共感します。その意味でもダイヤモンドリーグでそういう試合ならではの感覚を味わってほしいし、それを世界選手権に生かして欲しいと思います」とエールを送る。

 バーミンガムにはウサイン・ボルト(ジャマイカ)やタイソン・ゲイ(アメリカ)などの超ビッグネームは出場しないが、世界歴代5位の9秒78を持ち、ロンドン五輪4×100mリレー優勝メンバーのネスタ・カーター(ジャマイカ)や、世界歴代11位の9秒85を持つマイケル・ロジャース(アメリカ)などが出場する。

「日本選手権でも前半は他の選手が前にいたけど、最後にはキッチリ修正して2位になれた。だからもしどこかで前に行かれたとしても、それと同じような感じで自分の走りができるかという挑戦です」と笑顔を見せる桐生。それがどんなレースになろうとも、今後のために貴重な経験になるはずだ。

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