【やり投げ】打倒ディーン。絶好調・村上幸史は日本のエースに返り咲けるか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 そんなディーンに対し村上は、五輪イヤーだった昨年、シーズンイン直前に太股を肉離れしてその後も故障に苦しんだが、今シーズンは充実した成績を残して2度目の世界選手権メダル獲得の手応えを掴んでいる。

 その証が初戦の織田記念だった。

「去年はシーズンの入りが良くなかった。それが五輪に良い状態で行けなかった原因。だから今年は去年の経験を生かして、織田記念への入り方7日から始まる日本陸上選手権大会で対決する。をしっかりするのが最大の目標だった」

 そう話す村上の3投目は、やりを投げ終わったあとのフォロースルーに力感がなく、やけにコンパクトに見えた。だが空中に飛んだやりはグングンと飛距離を伸ばして85m96を記録した。

 ディーンが昨年出した記録を大幅に上回り、自己記録を2m01更新する日本歴代2位の記録。87m60の日本記録を持つ溝口和洋のセカンドベストも上回り、長年目標にしている日本記録も視野に入る記録だった。

「やっと室伏広治の84m86を上回れましたね。世界を見ても、ハンマー投げの記録よりやり投げの記録の方が劣っている国はないですから」と、村上は笑顔を見せた。昨年の世界ランキングで言えば7位相当。前回の世界選手権なら2位に相当し、昨年のロンドン五輪の優勝記録も大きく上回る好記録だ。

「腕の振りが大きく、長く、速く振れたと思うし、やりの方向も今日の風の中では一番いい方向に振り切れたのだと思います。リリースした瞬間はA標準(83m50)くらいかなと思ったけど、思いのほかスーッと伸びていった感じですね。この冬は、どうすれば最後までやりが死なずに飛んでいくかということをテーマにしていたので、その意味で成果が出たと思います」

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