【マラソン】野口みずきが完全復活へ。「信じてやっていれば奇跡は起きる」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 こういう強気な発言をできるのも、大会前のMRIの診察で「現役を続けている限りは完治することは無いだろう」と医者から言われていた、08年北京五輪前に発生した左臀部の炎症の痕跡が完全に消えていたからこそ。本人も「これはみんなに言って欲しいことです。絶対に治らないと言われても、信じてやっていれば奇跡は起きる。ケガをした選手にもそういう気持ちを持って欲しい」と話すほどだ。

 日本陸連の武富豊女子中・長距離マラソン部長は、野口の復活を「本当にきつかったと思うし、言葉では言い表せないような努力をしてきたと思う。そういう中で、金メダリストでありながらも純粋に自分の限界を追い求めるのはすごいこと。34歳という年齢は海外の選手を見れば特別上ではないが、その年齢までやれるということを、若い選手にも見てもらいたい」と言う。

 野口もまた、「今回は2時間24分台という結果だったが、世界はだんだん変わってきて、2時間20分を切ったり、2時間21から22分台で走るのが当たり前になってきているので日本は少し遅れていると思う。だから私は今回、アフリカ勢の彼女たちに絶対に負けたくないと思って走った。そういう走りを、若い選手たちには刺激として受け止めてほしい」と話した。

 いっぽう、自身の完全復活といえば、やはり全盛時のように2時間20分突破を目指せる状態ということになるだろう。そう聞くと彼女は、「そうなったらかっこいいですね」と言ってこう続けた。

「私のマラソンでの最大の目標は、広瀬監督の記録を破ることなんです。それが2時間18分55秒だから少し大変だけど、少しずつ状態も戻ってきているのでできないことはないだろうと思うし。それを信じながらやっていきます」

「もう一度、日の丸をつけて走りたい」という目標のひとつをほぼ確実にした彼女は今、完全復活に向けて、本当の一歩を踏み出したといえる。

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