【マラソン】野口みずきが完全復活へ。「信じてやっていれば奇跡は起きる」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

「走りの状態は練習でも良かったが、大会には体調を崩して出られないというのが続いたから。大阪を目指した11月からの練習では40km走も出来ていたけど、大阪を回避してからは練習をできない時期もあったので......。20kmや30kmでは練習での自己ベストも出ていたけど、一番大事なところで40km走をできなかった分スタミナが持たなかったのだろうし、ベストな状態にはできなかった」と広瀬監督が言うように、36km手前からはディババと木崎に離され始めた。

 野口も「36kmからは脚が動かなくなってしまった」と反省するが、37kmで6秒差、38kmでは7秒差、40㎞では8秒差に開かれただけで、粘る力は失わなかった。だが40kmを過ぎると、木崎のスパートで一気にその差を広げられ、ゴールでは優勝した木崎に31秒差の2時間24分05秒で3位という結果になってしまった。

 それでも日本陸連が内定条件にあげた2時間23分59秒以内にはあと6秒という記録。日本人2位ではありながらも、大阪国際女子マラソン日本人1位の福士加代子の記録、2時間24分21秒を上回り、今年8月の世界選手権代表の有力候補に名乗りを上げた。

「以前はグイグイと行く強気なレースをしていたが、それは長い距離や質の高い練習をバンバンこなして自信があったから、今回はその頃のような、強気な自分に少しでも近づこうと思って。40km走が足りなくても、大会直前に質の高い練習ができて、自信を取り戻せたし、強気で行こうという気持ちになれた。去年の(同大会レース後は)負けた悔しさと42.195kmを走れるところまで戻ってこられて良かったという気持ちが混じり合っていたけど、今回はそこからステップアップして自分でレースを作ることもできたから......」

 野口はこう話すと満足の笑顔を見せた。

 冷静な目で見れば、野口と広瀬監督が共に言うように、「2時間19分台を出した全盛期と比べれば、今は70~80%くらいまで戻ってきたところ」というのが正直なところだろう。だが野口は「一気に、完璧に復活という訳にはいかないので。40km走が足りなかったり、都道府県駅伝や大阪国際女子マラソンを回避したという不安材料はあったが、そのあとの10kmや20kmのハイペースでの練習は全盛期と同じようにできていたし。その上で、この大会は強気な走りができたので、これが私の完全復活に向けてのいいステップになったと思う」とポジティブに受けとめていた。

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