【東京マラソンへの道】中島彩「42.195キロを走って見えた、私の役目」

  • 中島 彩●文 text & Nakajima Aya
  • 喜 安●撮影 photo by Kiyasu

品川での折り返し地点。このときはまだ余裕の表情 品川での折り返し地点。このときはまだ余裕の表情 【品川→銀座(15キロ~22キロ)】並走ランナーから、まさかの声援!

 品川の折り返し地点を通過した私は、銀座へと向かいました。21キロ過ぎのハーフ地点を越えたときは、「あっと言う間だったな」という感じ。足も痛くありませんでした。

※20キロ記録:2時間10分45秒

 そして銀座では、並走していた人から、「中島彩さん! いつもブログ見てる! 頑張れ!」と急に声をかけられました。「応援に来てくれた友人から名前を呼ばれるかも」とは思っていましたが、まさかの状況に、私も「えーーっ!?」と叫んでしまいました(笑)。ただ、今日初めて会った方からの声援を嬉しく思い、その結果、足が軽くなりすぎて1キロ5分で走ってしまうミスを犯してしまいました! 「このまま行けば、確実に足が壊れる!」と気付き、ペースの乱れを修正して浅草へ。予想外の声援であんなにも疲労が吹っ飛ぶという体験は、初めてでした。

【銀座→浅草(22キロ~28キロ)】サラリーマンはマラソンも支える?

 次に通過した日本橋の周辺は、企業チームの応援が盛んでした。観客の掲げる応援ボードに「△◆部長、今日だけはかっこいい!」というメッセージがあったりして......。すると、ちょうどそのタイミングで、『14時から会議』と書いたタスキをしているサラリーマンスーツ姿のランナーが、私を追い越していきました。「サラリーマンが支える東京マラソン」を垣間みた瞬間です(笑)。


浅草・雷門の前でバンザイ! まさかこの直後、あんなことになるとは...... 浅草・雷門の前でバンザイ! まさかこの直後、あんなことになるとは...... 【浅草→佃大橋(28キロ~36キロ)】思わぬアクシデント。まさかの棄権!?

 そして江戸の町、浅草に到着。太鼓の応援があって、とっても華やかでした。そして雷門の前を通過すると、東京スカイツリーが目の前に現れます。さっきまで東京タワーを見ていたはずなのに! 東京マラソンの楽しさを、改めて実感。

 雷門付近の沿道では、応援の方から人形焼きをもらい、甘さで疲れが吹っ飛びました。「酸っぱいものが欲しいな~」と思っていると、梅干しをくれる方もいました。甘さと酸っぱさをいただき、体力復活! 至れり尽くせりのサポートでした。

 しかし、それに感動したのも、つかの間――。あるアクシデントが、私の身体に起こります。浅草から1キロほど走った29キロ付近で、私は脱水症状になってしまったのです。目の前がクラクラして、足取りもふらつき、スピードは1キロ6分台から8分台へ。それに気づいた沿道の方が水をくださり、「お姉さん大丈夫?」と本気で心配してくれました。

「10分ほど休もうか」と考えましたが、そこで思い出したのが、『週刊プレイボーイ』との約束です。私は編集部の方と、「4時間台でゴールできれば、誌面でセクシーグラビアをやっちゃう?」というチャレンジングな約束をしていたのです(参考:http://wpb.shueisha.co.jp/2012/12/06/15857/)。当初は冗談っぽい約束だったかもしれません。しかし大会前夜、東日本大震災の被災地・岩手のランナーたちがそれを知ることになり、「彩さん、頑張らないとね! プレイボーイ、楽しみにしている。元気になるよ!」と、予想以上に喜んでくれたのです。

 チャリティーランナーとして東京マラソンに参加している私は、「何としても4時間台にゴールして、被災地にプレイボーイを送るんだ!」と思いました。「元気な走りを見せて、みんなに元気になってもらう」と約束をしたはずなのに、「今の私は何なんだ......。こんなところで諦めたくない。悔しい!」。私は大量の水を飲み、口に塩を含んで、力を振り絞りました。

※30キロ記録:3時間24分43秒

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