【マラソン】ケニア人選手はなぜ日本を目指すのか? (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • photo by Getty Images

 関氏はマラソンやオリンピックに興味を示すケニア人は長く日本に滞在し、その風土に影響を受けた例が多いのではと指摘する。つまりケニア国内ではそこまでオリンピックの熱は高くないが、日本にいれば他の選手がオリンピックを目標に掲げ、メディアも過熱する。それに触れることで考え方も少しずつ“日本人化”したのではないかと言うのだ。カロキを指導する田幸寛史(たこう・ひろし)エスビー食品監督もそれを認めるだけでなく、彼らが日本に長くいるメリットも口にした。

「カロキも日本にいたからこそオリンピックの夢を抱き、それを追い続けることができた。ケニアでは多くの才能ある選手をふるい落とす形で強化が進みます。そのため若い選手たちは、自分より力のある先輩がオリンピックやマラソンの舞台に立てない現実を多く見ることになるのです。そうなると“自分も出られるはずがない“と考えてしまいがち。その結果、日本で駅伝を走る選択をする選手もいるでしょう。しかし日本に長くいるとケニア国内でのサバイバルに加わることなく、ただ代表選手の姿やタイムを目標にしていればいい。つまりモチベーションを維持しやすいのです」

 加えて日本にいれば、ケニア以上にチームから体のケアも徹底される。指導体制も、より細やかだ。その結果、日本で力を伸ばし、世界に羽ばたく選手が出るのである。

 駅伝という“チーム戦”が隆盛の日本で彼らは即戦力になる。職業として走ることを選択した彼らは、練習でも試合でも求められた役割を忠実に果たす。そして手にした報酬を持って故郷に帰り、ビジネスを起こす者も珍しくない。子どもたちはその姿を目にし、日本への夢を抱くのである。ケニア人選手が日本に向かう流れが今後も続くことは間違いなさそうだ。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る