【マラソン】エスビー食品からDeNAへ。マラソン重視の文化は継承されるのか (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 日刊スポーツ●写真 photo by Nikkan sports

 そして何より、マラソンを狙う上で、駅伝が及ぼすプラスの効果は見逃せない。「追う、追われるといった駆け引きをマラソンのスピード以上の展開の中で体感でき、調整の場として考えればこれ以上の舞台はない」とは瀬古氏の言葉だ。取り組み方次第では“マラソンの名門”復活への弾みとなるのではないだろうか。

 駅伝とマラソンの関係――これは今日のスピード化する世界のマラソンと、そこから引き離されつつある日本を語る上で、避けては通れないテーマだ。事の良し悪しは別にして、現在の日本で実業団チームが駅伝を回避することは、広告効果の面からも現実的ではない。かといって駅伝偏重が行き過ぎれば、マラソンでの成功は望めなくなる。今後もマラソン重視の文化をDeNAが引き継ぐのであれば、駅伝で勝ってなおかつマラソンでも勝てる選手を輩出するという難しい課題をクリアしなければならない。そのためにはかつてのエスビー食品のように、マラソンで世界を目指す練習の過程で、駅伝に取り組むというハードな活動が求められる。

 DeNAへの移籍発表で瀬古氏は「2016年リオデジャネイロ五輪に代表選手を送り込むこと、そして東京都が開催を目指す2020年の大会ではマラソンでメダルを」と目標を付け加えた。現場を率いる田幸寛史監督も「世界の舞台で戦える一流のアスリートを育成することで、精一杯貢献したい」と語った。

 いずれにせよ、求められるのは結果である。駅伝の結果のみで満足するチームになるのか、それともエスビー食品の文化を引き継ぎ、マラソンへの情熱を感じさせる成果を示すのか。当然、彼らには後者を目指してもらいたい。ここ数年はトラック種目を中心に戦っていたが、その間も「自分たちはマラソンチーム。今はその準備段階」と田幸監督も矜持(きょうじ)は捨てていなかった。駅伝を戦うことになっても、世界のマラソン界を席巻するアフリカ勢と戦う方法論を模索し続ける。DeNAにはそんなチーム作りを期待したい。

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