【陸上】男子4×100mリレー、新オーダーで2度目のメダルは十分狙える

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本 勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

リレーの1、2走を任されそうな江里口匡史(右)と山懸亮太(左から2番目)リレーの1、2走を任されそうな江里口匡史(右)と山懸亮太(左から2番目) 2000年シドニー五輪以降は世界大会決勝の常連となり、2008年北京五輪で銅メダルまでたどり着いた男子4×100mリレー。昨年の世界選手権で決勝進出を逃したショックからの再出発を図るチームは、経験者と若手がミックスされた顔ぶれになりそうだ。

 大会2日目の100mを制したのは、2009年から代表入りしている江里口匡史(大阪ガス)だ。無風の中のレース、江里口は「このくらいの状態でも10秒1台を出しておかなければいけない」と納得のいかない表情を浮かべていた。予選よりは良くなったものの、勝たなければいけないと自分にプレッシャーをかけすぎ、大学2年の九鬼巧(早大)を0秒01だけ抑える10秒29に止まったからだ。

「正直、今の実力は、日本短距離を引っ張っていける位置ではない。世界で結果を出すのが重要になってくる」という江里口の言葉。かつては朝原宣治(大阪ガス)や末續慎吾(ミズノ)が10秒10前後で優勝していたのに比べ、物足りなさを感じていた。

 銅メダル獲得チームの雰囲気を知り、牽引者となるべき存在だった塚原直貴(富士通)が、故障での出遅れを引きずって100m決勝で5位に沈んだのは痛手だった。だが、収穫は今年4月の織田記念で10秒08を出した山懸亮太(慶大2年)が、「5月の関東インカレでケガをして、グラウンドに出られたのは大会1週間前」という状態ながら、10秒34で3位に食い込んで代表を確実にしたことだ。10秒22で走った前日の予選では、本人が「終盤は空中分解したところもあった」というように好調時の伸びやかさは影を潜めていたものの、万全な体調となれば、十分にリレーの2走は務められそうだ。江里口との1、2走コンビは確定したと言っていい状況になった。

 一方の200m。今季の春、日本選手権だけに絞ってきた北京五輪3走の高平慎士(富士通)は、「うまくいけば19秒台も出せる手応えはあった」と試合前に語っていた。しかし、スタート10分前に左ハムストリングが痙攣(けいれん)するアクシデントに見舞われ、最後で失速して3位に落ちる波乱となった。

「多分緊張もあったと思うが、状態がすごく良すぎて自分の身体を制御できなかった。心と身体を合致させることの大切さを知った」と、高平は振り返る。しかし、北京五輪で補欠だった斉藤仁志(サンメッセ)を0秒01抑える意地を見せての3位。すでに20秒55のA標準記録を突破していることと、3走のスペシャリストということを考えれば、代表入りは確実だろう。彼がロンドン本番で20秒22の自己ベストを更新すれば、チームの真の大黒柱になれそうだ。

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